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多様な人材を活かす真のダイバーシティ実現に向けて

サイバーセキュリティから考える 企業の人材戦略と女性活躍推進

小幡さんの金沢さんは、手のジェスチャーを使って仮想会議で何かを説明するラップトップの前に座っています

DX推進とセキュリティの役割

あらゆる業種でDX(デジタルトランスフォーメーション)の必要性が高まるなかで、サイバーセキュリティの強化は企業にとっての最重要課題となっています。

2022年には、緊迫した国際情勢を受けたサイバー攻撃の激化に伴い、日本企業が情報漏洩などの深刻な被害を受けるケースが増加。セキュリティ対策に対する金銭的・人的投資が不十分な中小企業が標的にされ、中小企業を入口に取引先の大手企業を狙う手口も横行する一方で、ほとんどの危険は一個人のPCや業務に潜んでいるとも言われています。

サイバーセキュリティ人材育成や確保の議論において注目されるのが、女性を活かす人材戦略です。世界のサイバーセキュリティ人材は多様性を欠いており、女性の割合はわずか17%とされます。サイバーセキュリティ関連の求人が、2025年に世界全体で350万人に達すると予測される中で、スキルギャップを解消しながら、セキュリティ分野での女性の採用・定着を図ることが世界的な課題になっています。1

eラーニングによるスキルギャップの解消

日本マイクロソフトと幅広い分野のNPOが連携して取り組む就労支援プロジェクト「Global Skills Initiative」では、eラーニングのポータルサイトを通じて、サイバーセキュリティの基礎を学ぶ講座を提供しています。講座は就労を希望するシングルマザーのスキルギャップを解消するためにデザインされ、専門知識がない人でもセキュリティ対策の心得を身につけられるようになっています。

監修を担当した慶應義塾大学 國領二郎教授は、「デジタル技術は単 に効率を高めたり、サービスを改善したりするだけでなく、より多くの方に、社会・経済活動により深く参加していただくことを可能にする“包摂”の力があります」と、デジタルスキルを活かして働くことの魅力を語ります。サイバーセキュリティ分野の業務は勤務形態の自由度が高い傾向があり、幅広いキャリアの選択肢が存在します。講座でも「専門技術への挑戦はもちろん、広く世の中に役立つ知識として習得してほしい」と受講者に語りかけています。

「就労の面でいえば、子育てや高齢、介護などさまざま事情で就労が難しかった方々が、在宅やすき間時間に高付加価値な仕事を行うことが可能になる。シングルマザーの方々がデジタル社会で活躍する上で、就労支援の視点からデジタルスキル習得の教育プログラムを提供することの意義を強く感じています」

" デジタル技術は単に効率を高めたり、サービスを改善したりするだけでなく、 より多くの方に、社会・経済活動により深く参加していただくことを可能にする包摂の力があります。"

國領二郎:慶應義塾大学総合政策学部 教授
1982年東京大学経済学部卒、日本電信電話公社入社。86年ハーバード・ビジネス・スクール留学、88年経営学修士、ハーバード大学助手。92年ハーバード大学経営学博士。93年慶應義塾大学ビジネススクール助教授、2000年慶應義塾大学環境情報学部教授、2008年より現職。

1: サイバーセキュリティのスキルギャップを埋める ‒ マイクロソフトが23カ国に取り組みを拡大 https://news.microsoft.com/ja-jp/2022/03/24/220324-closing- the-cybersecurity-skills-gap-microsoft-expands-efforts-to-23-countries/

2: 経済産業省「サイバーセキュリティ体制構築・人材確保の手引き」(第2.0版) https://www.meti.go.jp/policy/netsecurity/tebiki_taisei_jinzai.html


「プラス・セキュリティ」を身に付ける

サイバーセキュリティ人材不足に対応する育成ターゲットは、専門人材だけに留まりません。自らの業務遂行にあたってセキュリティを意識し、必要かつ十分な対策を実現できる「プラス・セキュリティ人材」²にも注目が集まっています。

金沢を拠点に個人事業主として、企業のウェブサイト制作などを手掛ける小幡美奈子さんも、Global Skills Initiative でサイバーセキュリティ講座を受講し、プラス・セキュリティを身につけたひとり。

「サイバーセキュリティは、仕事に役立てるために以前から興味を持っていました。体系的に学んでみると、パスワード管理など、これまでもクライアントのためにセキュリティ対策を意識して仕事に取り組んでいたことに気づきました」

金沢市のインキュベーション施設「ITビジネスプラザ武蔵」で、ディレクターとして地元企業からさまざまな相談を受ける立場からも、企業経営者にサイバー攻撃を身近な脅威として認識し、対策に取り組んでほしいと語ります。

「石川県のローカルな企業は、紙ベースの業務が中心であることも多い。自治体もDX推進を後押ししていますが、自社もクライアントも守りながら、デジタルを活かしてビジネスを成功させるためには、サイバーセキュリティ対策が前提条件になると感じています」

本を手に微笑む小幡・金沢さん

女性とサイバーセキュリティ

小幡さんは、代表を務める「石川シングルマザーの会」でも、サイバーセキュリティの講座を開催することで、地域のシングルマザーを支援しています。

「ひとり親支援活動を始めた時から、女性のスキルアップを支援したいと願ってきました。受講者は、一般事務や介護職、飲食店など様々な業種の女性たちです。託児付きの対面講座を提供することで、できないという思い込みを取り払い、自分自身を認められるようになってほしい。学びのきっかけさえあれば、その先は自分で進むことができると信じています。

私も業務でクライアントと技術者を繋げる役割を担うことが多く、専門用語を噛み砕いて伝える言語化能力やコミュニケーション能力が自分の強みになっています。女性の細やかな気遣いは、サイバーセキュリティ分野で活躍する上で役に立つはず。これまで積み重ねてきた個々の経験を活かしながら、そこにサイバーセキュリティの知識を上乗せすることで、企業が安心して業務を任せることができる即戦力となるのでは、と期待しています」

"女性の細やかな気遣いは、サイバーセキュリティ分野で活躍する上で役に立つはず。 学びのきっかけがあれば、その先は自分で進むことができると信じています "

GSIとは

Global Skills Initiativeは、マイクロソフトの全世界的な取り組みの一つで、新型コロナウイルスの影響により就労・雇用に影響を受けた方達のスキルアップと雇用可能性の拡大のため、日本マイクロソフト株式会社が様々な領域のNPO等と連携して展開する就労支援プロジェクトです。

eラーニングのポータルサイトでは、初心者でも学べる全6回の「サイバーセキュリティコース」を含むさまざまなコンテンツを通じてスキルアップの機会を提供しています。

GSIとデジタル/ITスキルとキャリアコンサルタントの三要素のコラボレーション
ノートパソコンで作業する小幡金沢さん

Global Skills Initiativeの取り組みの詳細は、ウェブサイトをご覧ください。
https://gsi-jp.com